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第155回 【第47回明治神宮大会】桜美林大vs環太平洋大 「千葉ロッテ1位指名の佐々木、8回一死までノーヒットノーランの快投 」2016年11月14日

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千葉ロッテ1位指名の佐々木、8回一死までノーヒットノーランの快投

佐々木 千隼(桜美林大)

 桜美林大の先発・佐々木 千隼(4年)が8回一死までノーヒットノーランの快投を演じた。スリークォーターの腕の振りで「自己最速153キロの快速球を前面に押し出し」と書きたいところだが、かぎカッコの部分だけが事実と異なる。ストレートは恐らく3割程度で、残りの7割は変化球というのが佐々木のピッチングスタイルだ。

 変化球はスライダーとシンカーが中心で、スライダーは打者寄りの変化で曲がりが大きいという打者が最も嫌がる軌道を描き、スライダーと逆方向に変化するシンカーは左打者の外角に有効だが、ときには内角をえぐる球としても用いられる。この精度の高い変化球があるからこそ150キロ以上を生計測するストレートがさらに生きてくる。11奪三振のうち結果球はスライダー2、シンカー3、ストレート6で、直曲球の比率は5:6。理想的と言っていいだろう。

 この佐々木、バッティングでも驚かせてくれた。第3打席の6回表には二死二塁でライト前ヒット、第4打席の8回には1ストライク後のチェンジアップをアッパー気味に振り抜いて右中間にソロホームランを叩き込んでいる。桜美林大が所属する首都大学リーグは指名代打を採用しているのでピッチャーが打席に立つことはない。全国大会に出場するのもこの大会が初めてなので、公式戦を打席に立ったことはない。それが初めての経験で最高の結果を出すのである。非凡としか言いようがない。

 この試合の勝負を決めたのは4回表の桜美林大の攻撃だ。先頭打者の3番沼田 涼(4年・遊撃手)はセーフティバントを試み間一髪アウトになるが、一塁到達3.81秒という猛烈なスピードで環太平洋大バッテリーを揺さぶる。続く村井 諒(4年・一塁手)がセンター越えの二塁打、5番大平 達樹(3年・捕手)が初球のスライダーを振り抜いてレフトスタンドに達する2ランホームランで2点を挙げ、さらに死球のあと7番工藤 誠也(3年・中堅守)が一塁到達3.99秒の俊足で走り抜ける内野安打でチャンスを広げ、二死後、9番山本 司(2年・三塁手)がライト前にタイムリーを放ち3対0と先制する。

 佐々木の力投、打線のつながりなど勝因はいろいろなところに見出せるが、もう1つ見逃せないのが打者走者の全力疾走だ。私が俊足の目安にする「一塁到達4.3秒未満、二塁到達8.3秒未満、三塁到達11秒未満」を5人(7回)がクリアしている。すでに紹介した沼田、工藤以外でも、井橋 俊貴(1年・左翼手)がピッチャーゴロで3.90秒、山野辺 翔(4年・二塁手)が三塁打で11.68秒など、環太平洋大を上回る走力で圧倒。佐々木のワンマンチームでないことがこれらの走力を見るとよくわかるのだ。

(取材・文=小関 順二

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プロフィール

小関 順二
小関 順二
  • 出身地:神奈川県横須賀市生まれ。
  • ■ プロ野球のドラフト(新人補強)戦略の重要性に初めて着目し、野球メディアに「ドラフト」というカテゴリーを確立した。ストップウオッチを使った打者走者の各塁走塁、捕手の二塁スローイングなど各種タイムを紹介したのも初めてで、現在は当たり前のように各種メディアで「1.8秒台の強肩捕手」、「一塁到達3.9秒台の俊足」という表現が使われている。
  • ■ 主な著書に『プロ野球問題だらけの12球団』(年度版・草思社)、『プロ野球スカウティング・レポート』(年度版・廣済堂あかつき)、『ドラフト物語』(廣済堂あかつき)、『野球力』(講談社+α新書)、『プロ野球サムライたち』(文春新書)などがある。
  • ベースボールファン(有料コラム)では、「野球を歩く」を寄稿、野球ファン必見の野球歴史コラムを配信している。 
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