第9回 極端な「打高投低」の理由とは? 【韓国野球】2014年06月22日

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【目次】
[1]極端な打高投低
[2]驚異のホームラン打者・朴炳鎬
[3]韓国のプロ入りを目指す元広島・申成鉉

驚異のホームラン打者・朴炳鎬

韓国を代表するホームラン打者に成長した朴炳鎬選手(ネクセン)

 これほどの打高投低になったのは、いくつかの理由が考えられている。

 その理由の一つが球団増による戦力均衡の措置で外国人枠を増加したことにより外国人打者が増加したということだ。

 今年の韓国プロ野球の最も大きな変化は、10番目のチームとしてKTが2軍戦に参入したことである。
来年からは1軍の試合にも加わることになっている。現在奇数の9チームによる変則日程で行われているが、来年からは、規則的な運営が可能になる。

 ただ問題は、韓国の高校チームは60しかないということ。(※日本は4000校強)これで10チームのプロ野球を支えるわけだから、当然選手層は薄くなる。そこで今まで2人だけだった外国人選手を、3人に増やすことになった。ただし、3人のうち1人は、別ポジションでなければならない。
外国人選手が2人の時は、より勝利に直結する投手に外国人が多かったが、今年から各球団に外国人打者が多くなった。

 もっとも、本塁打数の上位5位のうち、外国人選手はシアトル・マリナーズなどでプレーしたNCのテイムズだけ。

しかし各球団の打線の層が厚くなり、パワーアップしたことは間違いない。そのテイムズは6月3日のネクセン戦で1試合3本塁打を放つなど、本塁打17本で現在2位。

 ちなみにティムズを抑えての1位はネクセンの朴 炳鎬(パク・ピョンホ)である。朴は43%となる55試合を消化した時点で26本。50本以上を望める勢いだ。しかも、5月4日のNC戦では木洞野球場のスコアボートを超える、まるでマンガのような場外本塁打を放ち怪力ぶりを見せつけた。2年前に31本で本塁打王になった時は、その実力に懐疑的だったが、昨年も37本で2年連続の本塁打王。そして、今や押しも押されもせぬ、韓国球界を代表するホームラン打者である。

高校野球は投球数制限

京都国際高校時代の申成鉉選手

 外国人打者の加勢や、韓国人打者のレベルアップが打高投低の最大の要因であることは確かだが、韓国の専門家が指摘するのは、審判のストライクゾーンの狭さである。投手がカウントを悪くして、打たれるケースが多いというわけだ。その一方で見逃せないのは、投手の質の低下だ。

 昨年、柳 賢振がドジャースに入り、今年からは、韓国代表の中心投手であったKIAの尹 錫珉(ユン・ソクミン)も、オリオールズ傘下のチームに入った。北京五輪で日本を苦しめたSKの金 廣鉉も、近年故障続きで、復調の兆しはあるものの、まだ本調子でない。サムスンの抑えの切り札、呉 昇桓(オ・スンファン)は、今年から阪神だ。

 さらに問題なのは、2006年の柳 賢振、07年の金 廣鉉以来、目立った若手投手が出ていないこと。
今年防御率と奪三振でトップの梁 玹種は、金 廣鉉と同じ07年に入団。8勝で勝利数トップの張 洹三(チャン・ウォンサム/サムスン)は、02年の入団だ。

 多額の契約金を受け取り入団した期待の大型新人は何人かいたが、大半が故障により期待外れの状態だ。そこで問題となるのが、アマチュア時代の酷使である。
そこで今年から高校野球では、投手は1試合130球までとし、制限投球数に達した投手は、3日間登板できないことになった。

 投手の酷使は、日本でも問題になっている。ただ、韓国の高校生投手を見ていると、投げ込み、走り込み不足を感じる。上体は強いので力のある球を投げるが、リリースポイントが定まらず、制球が定まらない投手が多い。
投げ込みの是非はあるが、韓国で指導経験のある日本人コーチからは、「ある程度は投げ込まないと、フォームが固まらないんだけどな」という声を聞く。

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