第6回 渡辺泰眞さんインタビュー/日本で活躍中の選手紹介&現地映像 【スリランカ野球の今】 2013年11月22日
【目次】
[1]今後のスリランカ野球を盛り上げてくれる、スター候補の選手たちが日本で活躍中!/現地映像配信
[2]JICAで活動した渡辺泰眞さんインタビュー!
[3]今後のスリランカ野球と夢

【目次】
[1]今後のスリランカ野球を盛り上げてくれる、スター候補の選手たちが日本で活躍中!
[2]試合は用具をかき集めてから/クリケット文化との融合と、教育システムの充実
[3]今後のスリランカ野球と夢
試合は用具をかき集めてから

今回お話を伺った渡辺 泰眞さんは、青年海外協力隊員としてスリランカに赴任し、草の根の交流を続けて現地で野球を広め、ナショナルチームの監督も務めました。スリランカ初の球場建設にも尽力された一人です。そんな渡辺さんに、スリランカ野球の今を余すところなく語っていただきました。
――スリランカの野球チームは、JICAの皆さんが行くまでは国内で4チームくらいだったと伺いました。それから、どれくらい増えたのでしょうか?
渡辺 泰眞さん(以下「渡辺」) 今では、野球をやっている生徒がいる高校は25校ほどです。大学は14校あるんですけど、その半分の8校で野球をやっていて、あと、クラブチームが15チームくらいですかね。

JICAの役割として、大事な要素を表す写真。野球を通して、子供たちの未来を創るのが我々の大事な役目。
――なぜ、10年間のうちにそれほどまで野球が広まったんでしょうか?
渡辺 歴代の青年海外協力隊員が頑張った、というのはあると思います。学校ベースでみんなを集めて普及活動をしていきましたから。
あとは、スリランカはクリケットが盛んなんですけど、野球には、そのクリケットみたいな要素があって、クリケットじゃ鳴かず飛ばずだったけど、でもやりたい!っていう子にマッチしたのかもしれません。みんなスポーツは好きだから。
ただ、用具を揃えるのが難しくて。今もそうだけど、用具は使い回しです。普及活動やコーチとしてチームに行ったときは、最初に道具は何があるかを見てから練習を決める。そういうのが大変でしたね。だから、本格的な野球の練習というよりは、まずは遊びからでしたね。
――用具が不足している環境ですが、試合をする機会はありましたか?
渡辺 なかなか無いですが、地方ごとでそれなりにチーム数はあるので、セッティングすればできますね。その時は用具をお互いかき集めて、一緒に使います。交代の時にグラブを貸したり返したり。スリランカは学校組織がちゃんとしているんです。年代ごとに4つカテゴリがあって、年に何回かは絶対に競技会をしなくちゃいけない、というのがある。だから、組織さえ作ってしまえば大会は成立させられるんです。大会があれば、下手でもみんな優勝を目指して頑張れますから。
クリケット文化との融合と、教育システムの充実
――そんな中、昨年12月には、スリランカ初の球場が出来たわけですが、球場作りのノウハウはあったのでしょうか?
渡辺 クリケットが盛んなので、グランドに芝を張って、というのはお得意なんです。あとは、ベースがここにあって、とか細かいところを確認するだけ。ただ、一つ目の球場だから、そこが全部モデルというか、模範になる。だから内外野に芝がある、素敵な球場を作りたいな、とこだわりました。常に天気もいいし、クリケットの芝文化もあるから、出来上がってからも、ちゃんと管理できているようですね。
――それは心強いですね。

現在の球場。「これは自分もまだ見ていないので、早く見に行きたい」
渡辺 クリケット文化があるというのは本当に大きいですよね。設備的な面ももちろん、打つ、投げる、走る、という基本動作はクリケットにもあるので、普及という意味でも大きい。練習していても、日本人の初心者なんかよりセンスがいいですから(笑)。最初からフライが獲れますもん。野球を知らないけれど、基本が出来ている感じ。だから野球が育つ環境はあると思う。そう信じています。
――南アジア初の野球場ということで、今後、南アジア野球界の中心としての役割も担っていくことになると思います。
渡辺 そうですね。このグラウンドの価値の一つはそこにあると思います。今、南アジアの大会はパキスタンでやっているけど、そこは陸上競技場を変えた簡易施設だし、政治的な面でもインドがいつも来られないんです。インドは結構野球の組織がしっかりしていて、女子野球なんかもあって日本の大会にも出てるんです。でも南アジアの大会になると、絶対行かない。だから球場が出来たことで、スリランカで開催出来るようになれば良いと思います。治安もいいし、リゾートもあるから選手も旅行感覚で来られるといいですよね。
――南アジア大会のお話も出ましたが、実際にスリランカで野球をやっている彼らの目標はどこにあるのでしょうか?
渡辺 強くなりたいだとか、この大会に出て、何位に入る、といった目標はあまりないと思います。
それよりは、野球を通じて日本人と、その文化を学ぶことが大きいかもしれない。彼らはなかなか海外に出る環境にないから、スポーツを通して環境の違う場所にいる人と出会う、っていうことを野球に求めているのかもしれません。クリケットはもちろん、バレーボールやっていてもコーチはスリランカ人で、同じコミュニティの中なんですよね。
野球をやるメリットは、もちろん野球が楽しいっていうこともあるけど、日本人の友達ができるっていうところじゃないかな。自分たちが外に行けない分、僕らみたいな友達を通して、その先を見る。それが大切なんだと思います。

AAAアジア選手権にて。日本人選手とのコラボがgood。こんな日が来るなんて誰も想像していなかった。日本とスリランカの友好関係を示す象徴。
――スリランカ野球はレベルとしては上がってきているのでしょうか
渡辺 上がってるとは思うけど、どうなんだろう?勝つ、負ける、はわからないけれど、システムとしては成長してきています。野球をやりたかったらここに行けば出来る、上の学年や、上のレベルに行ってもやる場所がある、という環境づくりは整ってきているから、いつかそれが一気に花開いてくれるんじゃないでしょうか。
南アジアでも頑張っていたり強いところはあるけれど、どこもシステム化していない。やりたい人が集まっているだけだったり、軍隊として強化しているだけなんです。育成とかじゃないんですよね。でもスリランカには、そのシステムがあるんです。
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