第4回 スジーワ・ウィジャヤナーヤカさん インタビュー前編  【スリランカ野球の今】2013年10月27日

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【目次】
[1]スリランカの少年、野球と出会う
[2]JICA、植田一久さんとの出会い
[3]日本へ、そして人と人の間に

日本へ、そして人と人の間に

現在、スジーワさんは審判として活躍をしている(撮影・阿部謙一郎)

――最初に甲子園を見たのはいつの時期になりますでしょうか?

スジーワ 甲子園を初めて見たのは2008年です。前から行きたいと思っていて、植田さんと一緒に甲子園球場を見に行きました。
 びっくりしましたね。福岡ドームでも観戦したことがありますけど、綺麗さは甲子園が上でしたね。こんなところに審判として立ちたいと思いましたね。それで、行くならば今しかない。2007年にプロ・アマ審判講習会がスタートして、2008年に甲子園を見て、行く道は一つしかない。審判になりたいって。もう審判の講習会が始まっていたけど、勉強してアピールしてやってみせるしか無いと思っていました。

――日本に来たきっかけを教えていただいてもよろしいでしょうか?その時の野球への思いが強かったのですか?もしくは、ほかのことも勉強したくて、日本に来たのでしょうか?

スジーワ きっかけの一つは2002年にあった、植田さんとの出会い。もう一つは姉が立命館大学に留学したという縁があって、日本が好きになって、いつか日本に行きたいと思っていましたね。
 きっかけは野球が大きかったと思いますが、野球だけではなく、日本はマネジメントが凄いと思っていました。アジアでもスリランカにとっても神様みたいな存在でしたし、姉も校長先生から安全だから「留学したいならば日本しかない」と言われていました。
 日本のマネジメントの素晴らしさ、そして日本の素晴らしさは野球を通じて知りたい。日本の心の素晴らしいところを学びたい。人のために何ができるか、それは日本はよく知っていると思っていたんです。日本は『人間』という漢字の意味をしっかりと実践していましたから。そういうところを学びたいと思いました。

2008年 初めての甲子園

――『人間』の漢字の意味ですか。

スジーワ 人間は人の間と書きますよね。人間は、人と人の間に人がいます。そうすることで人は落ちない。誰かが応援するということです。そこが人の素晴らしさだと思います。人間は一人じゃない。誰かがいる。頑張ると思ったら一人じゃない。良いことをやろうとすれば、協力する人がいる。
 私は日本にきて、野球の審判員となって、都市対抗、大学野球選手権の舞台に立つことができました。日本人と同じ舞台で全日本大会の球審をしたこともあります。全国大会での球審は40代ぐらいの人しかやったことがないですが、私は20代で初めての球審をやりました。もちろん外国人で主審をやるのは初めてと、なんでも初めてになるのですが、そういうところを応援しようという人が野球場にも来てくれました。

 もう言葉が出ないですよ。日本の素晴らしさはみんなで応援しようということ。人のために何ができるか。自分よりも自分たち。『IよりYou』。そこを実際にやっているのが日本だけだと思うんですよ。人のためになって、自分たちが楽しいことをやれば、世界は楽しくなる。
 自分が出来る範囲で、応援したらみんな楽しいんですよ。野球もそうですよ。自分ばかりでは野球にならないんです。私は打てなくてもいいよ、でもバントはしっかりする、守るのはしっかりやる。そこが人間関係ですよね。チームスピリッツであり、チームワークですよね。一緒にやって楽しくやって勝ちましょうということです。それが野球のすごいところだと僕は考えています。

(後編へ続く)

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プロフィール

安田未由
安田 未由(Myu Yasuda)
  • ■大学時代には北は北海道から南は沖縄まで、日本各地の高校野球部を50校ちかく取材。在学中に「球児とチームの心の成長」を描いたノンフィクション書籍を3冊出版。その後、株式会社リクルートの企画営業職を経て、高校野球ドットコムの創業期メンバーとして、初代編集長を10年間務めた。
  • ■ <書籍>主な寄稿・出版物
  • ・野球ノートに書いた甲子園 シリーズ全6巻(2013年~2019年/KKベストセラーズ)
    ・スポーツ感動物語 アスリートの原点「遅咲きのヒーロー」(2016年/小学館)
    ・甲子園だけが高校野球ではないシリーズ(2010年~/監修・岩崎夏海/廣済堂あかつき出版社)
    ・ただ栄冠のためでなく(2011年/共著/日刊スポーツ出版社)
    ・「高校野球は空の色」「高校野球が教えてくれたこと」など大学時代に3冊出版
  • ■ 講演依頼
    講演・セミナー依頼受付中

コメント (1)
本当ファンです2015.01.19 カタクリ粉
すごいファンです。
ぜひ母国で成功して欲しいで

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