第4回 スジーワ・ウィジャヤナーヤカさん インタビュー前編 【スリランカ野球の今】2013年10月27日
【目次】
[1]スリランカの少年、野球と出会う
[2]JICA、植田一久さんとの出会い
[3]日本へ、そして人と人の間に
JICA、植田一久さんとの出会い

――植田さんに初めてあったときはどんな印象でしたか?
スジーワ 面白い人だなと思いました。植田さんが球場に来てくれたんですけど、僕が出会った初めての日本人なんですよ。当時はもちろん日本語もわからないですけど、日本人と会ったことが一番嬉しくて、家に帰っても、日本人来ましたよ~!日本人と会話したよ!日本人と写真を撮った!と家族に話した思い出があります。だんだん植田さんと会うのが楽しくなってきて、面白くなってきて。それから植田さんは僕を代表に選んでくれて、練習もしてくれた。植田さんからいろいろなことを学びました。
植田さんから、野球のほかにもいろいろなことを学んだんです。心の大事さ、人間関係、相手のことを考えること。そういうことが勉強できました。
植田さんの教えでだんだん野球も面白くなってきました。できなくても、がんばれば、できるようになりますよとか。ボールがないと何も出来ない、ではなくて、あるもので楽しくやろうと。
ボールがないので、日本のキャッチボールとはまた違うと思うんですよ。スリランカの場合は一人が真ん中にいて、周りをみんなで囲って、キャッチボールをしあう。そうしてボールを回すと集中出来る。最初は順番通りに回してやっていましたが、次はいろいろなことへ投げて、どこへ投げるか分からないよ!といって、キャッチボールをする。どこにいるかわからないからみんなで集中してやれるんです。
植田さんは楽しくやることを教えられる人だったので、野球が楽しく出来たんです。面白いから練習をしていったら、だんだん上手くなる。みんなでできないこと、難しいことをやって、みんなでできればもっと楽しくなるんです。
あとは、やってみせてくれました。まず植田さんがやって、私たちがやってみて、できたら褒めてくれる。ペアで、グループで、みんなで、チームでやっていく。植田さんがいなかったらできなかったと思いますし、私もこの場にいなかったと思います。
――スジーワさんの人生を変えるくらいの貴重な出会いだったんですね。

野球の練習に励むスリランカの選手たち
スジーワ そうですね。私はお金より出会いだと思います。植田さんは凄い人だと思います。お金で買えないくらい、人生も、考え方も代わりました。そのおかげでうちの後輩たちも楽しんでやってます。こうやって人は変わっていくと思います。
――クリケットと野球はまた違うのでしょうか?
スジーワ クリケットもチームワークがあって楽しいですよ。
でも、野球は勝ち負けよりも楽しさが残る。試合で負けても、0点に抑えた回もあるし、点を取れた回もあるし、そういうところが楽しい。
試合結果を見てダメだと思ったら終わりだと思うんですよ。そうじゃなくて、試合の中で楽しいところ、素晴らしいプレーもある。
私がやった試合で、負けた試合では、負けたという部分は覚えていない。負けた試合でも、良かったこと、素晴らしかったところを思うことで、次に結果が出ると思っています。悪いことを思っても、カッコ悪かったことを思っても意味が無い。
私の職場にも30人ぐらいの同僚が働いています。彼らにこれが悪い、これが下手というだけでは意味がないと思うんですよ。嫌いと思うところは可愛いと思わないといけないんですよ。そして良いところは褒めてあげると、できなかったこともできると思うのですよ。それは仕事でも野球でも同じで、できるところをアピールして、褒めてあげることで結果が出てくると思うんですよ。
そういうことから見ても、日本の高校野球は楽しいですよ。面白いですよ。みんな、勝ち負けよりも楽しいところを見つけている。試合が終わったら、自分たちが応援した人に挨拶するでしょう?負けても涙と一緒に挨拶するでしょう?
負けたことは仕方がない。また一緒に頑張るしか無い。だから、終わったものに対して、ちゃんと話して、みんなに挨拶をして、持ち場を綺麗にして、反省会をして、次に活かす。こういう人たちにはステップアップしてほしいと思います。

- 安田 未由(Myu Yasuda)
- ■大学時代には北は北海道から南は沖縄まで、日本各地の高校野球部を50校ちかく取材。在学中に「球児とチームの心の成長」を描いたノンフィクション書籍を3冊出版。その後、株式会社リクルートの企画営業職を経て、高校野球ドットコムの創業期メンバーとして、初代編集長を10年間務めた。
- ■ <書籍>主な寄稿・出版物 ・野球ノートに書いた甲子園 シリーズ全6巻(2013年~2019年/KKベストセラーズ)
- ■ 講演依頼
・スポーツ感動物語 アスリートの原点「遅咲きのヒーロー」(2016年/小学館)
・甲子園だけが高校野球ではないシリーズ(2010年~/監修・岩崎夏海/廣済堂あかつき出版社)
・ただ栄冠のためでなく(2011年/共著/日刊スポーツ出版社)
・「高校野球は空の色」「高校野球が教えてくれたこと」など大学時代に3冊出版
ぜひ母国で成功して欲しいで
コメントを投稿する